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#6‐3「風も光も声も通る92㎡のワンルーム」素材を活かした丁寧なデザインに挑戦_リノベーション編(リノベる。スタッフの家づくり)

連載企画「リノベる。スタッフの家づくり」では、中古マンション購入+リノベーションのワンストップリノベーションサービス「リノベる。」のスタッフの自邸づくりを紹介します。いつもはお客さまに提案する立場のリノベのプロが、どのように物件探しやリノベーションを行なったのか、ユーザーとしての迷いや悩みなどのリアルボイスと、プロならではのノウハウや工夫をお届けしていきます!

前回に引き続き、設計デザイナーの天野慎太郎さんの家づくりをご紹介。いよいよ今回は、長年お客さまに数々のアイデアを提案してきた天野さんがつくった、“自分自身が納得のいく家”の中をのぞいてみましょう。
(文 村崎恭子)

前回まではこちらから↓
#6_1 住宅購入のキッカケ編
#6_2 物件探し編

Data
・マンション(RC) 14階
・面積:92㎡
・築年数:築42年(購入時)
・エリア:大阪市西区
・家族構成:夫婦+長男(9)、次男(6)

三面採光を活かした92㎡のワンルーム

ネットで初めて図面をみた時からリノベーションのイメージが湧いていたという天野さんですが、そのときすでに間取りの方針も決まっていたそうです。ネットにアップされていた図面を印刷し、そこにスケッチを描き込んで間取りの検討を進めていきました。

ネットの図面に描いた間取りスケッチ

「マンションが一戸建てに比べて圧倒的に劣るのは光と風です。この物件は東北西と3面採光で、全周にバルコニーもまわっているので、これをうまく活用して光と風を取り入れようと考えていました。」

当初から、できるだけ間仕切らず、すっきり広々とした空間を目指していた天野さん。「92㎡の大きなワンルーム」というコンセプトで、奥さまとも相談しながら考えた結果、最終的にこのような間取りが生まれました。

最終的な間取り

2つの個室の壁は、あえて天井まで届かない高さにし、天井が一続きになることで空間に広がりを出しました。また、床面積を増やすために寝室の上にはロフトを設置し、子どもの遊び場にしました。

「結果的に間取りを完全には区切っていないので、風も光も声も抜けるつくりになりました。思い描いていた部屋になったなと思っています」

天井と壁の間に隙間をつくることで、
光や風の通り道を意識
寝室(写真奥左)の上にはロフトを設置。
コの字型の壁を置いて固定しています

実はこの壁、置いてネジで固定してあるだけで、最終的には全て撤去しワンルームに戻せる仕様になっています。壁を取り払ったり付け替えたりできるので、例えば子どもたちのライフステージの変化に合わせてスペースの使い方を変えたり、次の所有者の手に渡ったとしても、住み手に合うスタイルに変更したりできます。リノベーションの設計者として「最終的にワンルームに戻せる」ことにもこだわりました。

壁を全て取り払えば、
このように大きなワンルームになります

「廊下は不要」知っていたから生まれた空間

天野さんが特に気に入っているスペースの一つが、玄関まわりです。リビングにかけて長い廊下をつくるのではなく、玄関を入ったところにフレキシブルに使える広いスペースをつくりました。

玄関を入ると、まず飛び込んでくるのがこの光景。
「お客さんがうちに来てすぐ、
ここを見て驚いてくれるのは嬉しいですね」と天野さん

「お客さまにも『廊下は不要』と言う人は多くて、僕も無駄だということはよくわかっていたんだけど、うちの間取りは玄関からリビングまでどうやったって廊下ができるんです。だったら最小限にしたいなと考えるうちに、玄関もシューズインクローゼットもウォークインクローゼットも全部兼ねた、いわば“広い廊下”ができました」

一つの部屋としても使えるので、コロナ禍がやってきてからはワークスペース として大活躍したそうです。

横長に広く取った玄関の隅につくった「床の間」。
天野さんがよく、活かしきれないスペースに提案する手法です。壁には季節の花を飾り、子どもたちが外で拾ってきた石や枝の置き場にも。

リノベーションは”おしゃれ”にしなくたっていい 

天野さんは、完成した自邸をお客さまにも紹介していきたいと考えていたため、設計デザイナーとして伝えたいメッセージを込めていました。それは、「丁寧にデザインしていけばリノベーションはうまくいくんだよ」ということです。

「リノベーションって『おしゃれにしないといけない』って思っている人が多く、ある種の強迫観念みたいになっているなと感じていて。だから、わざわざコストが嵩むタイルや石、アクセントの壁などを使わなくても、『安くても、自分が心地よいと感じる素材で丁寧につくったら、こんなに素敵になるでしょう?』 っていう一つの例にしたかったんです」

そんな考えで、天野さんは全体的に安くて手に入りやすい素材を採用。プラスターボードやシートなどの新建材を一切使わない代わりに、ランバーコアの合板を薄く白く塗ることでいい風合いに仕上げたり、合板とフレキシブルボード、木材や鉄を使ったりと、工夫を盛り込みました。これらのアイデアは、これまでお客さまに提案してきた中で「いつかやりたい」と温めていたものだったそうです。

壁や建具に使ったランバーコア合板は、
塗装することでいい風合いに。
場所によって木口を見せ表情を変えるなど、
アイデア次第でいろんな工夫ができることを示しました

さらに、内装を考える上では、リノベーションで人気の“アイコニックな要素”をあえて避けたそうです。「そういうデザインは、リノベーションの魅力を引き上げた優れたポイントだと思っていますが、提案の幅を広げるためにも、今回は違うやり方に挑戦してみようと考えました」と天野さん。

例えば、天井や壁に配線用の鉄管を一本もつけずに横から引いたコードを垂らしてコンクリートの素材をより美しく見せたり、キッチンにはモルタルではなく前から好きだったフレキシブルボードという素材を採用したり、既存のアイアンではなく、真鍮のものをオリジナルでオーダーしたり。風や光の通り道は間取りの設計で確保していたので、内窓をつける必要もありませんでした。

天井や壁はコンクリートの素材の美しさ優先。
照明の配線をあえて横から持ってきて垂らすなど、
鉄管を使わない手法を選びました
モルタルを使ったカウンターキッチンはあえて避けました。家族が集う場所はキッチンよりダイニングにしよう、という意図も。
この4mのテーブルも、天野さんのお気に入りです

家を持つことは暮らし方をリセットできるスイッチ

自分でつくった家での暮らしは居心地がよく、「家を持つっていうのは、暮らし方をリセットできるくらいのスイッチだと思った」と噛み締める天野さん。暮らしてみて「これはやってよかった!」と実感している部分は、お客さまにも積極的に勧めているそうです。

「ソファをテレビに向けず、ダイニングに向けたことはすごくよかったと思います。これをやるだけでテレビが部屋の主役にならない。あと、床暖房と食洗機は本当に役に立ちました(笑)必要性を全く理解せず、経験値として試しに付けてみましたが、絶対につけたほうがいいですね。」

ソファはテレビではなく、ダイニングの方に向けました

これから家を買う若い人に対し、天野さんは「2軒買うこと」を勧めます。

「2軒目を買いやすい時代になったので、若いうちに家を買って、それをベースに人生設計を立てるのもいいんじゃないかなと思っています。「リノベる。」のお客さまにも、住み替え前提で中古マンション購入+リノベーションをする方が増えていますし、そうやってライフステージに合わせて家を住み替えていくことが、次のスタンダードになっていったら素敵ですね。若い時に家を買う人は賢いと思うし、うらやましいです。」

「一戸建てにも挑戦してみたい」と話していた天野さん。もしかするとそう遠くない将来、2軒目が実現する日が来るかもしれませんね。

staff profile

天野慎太郎
社歴11年のベテラン設計デザイナー。大阪オフィスに勤務し、これまでに手掛けたリノベーション物件数は約70件。


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#6‐1“戸建て志向”だった設計デザイナーが中古マンションを衝動買い!住宅購入のキッカケ編(リノベる。スタッフの家づくり」)

#6‐2「面白い家がつくれそう!」ピンときた三面採光の物件の付加価値とは?_物件探し編(リノベる。スタッフの家づくり)

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