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リノベーションの品質って、どうやって見極めるの?リノベーションの品質基準を定め 普及を行うリノベーション協議会 本部事務局長 樽宏彰さんに聞いてみた

連載企画「リノベを科学する」第7回のゲストは、リノベーションの品質基準を定め、その普及を行う団体「リノベーション協議会」本部事務局長の樽宏彰さん。暮らし始めると見えなくなってしまう、配管や配線などの工事の品質をどうやってチェックしているか?保証はどうなるのか?など、多くの方が持っているリノベーション工事に対する不明や不安を、ビギナー研究員・田形と、中堅研究員・千葉がしっかり聞いてきました!
(取材:リノベる。スタッフ/田形研究員、千葉研究員、文:村崎恭子)

まとめ

千葉:いよいよ、この連載「リノベを科学する」も、今年度最終回になりました…!

田形:「今年度最終回」っていうことは、来年度も続くのかな…?それはさておき、ここまで全7回で、中古マンションの資産性や建物の構造、マンション管理まで、リノベーションに関わるいろんな分野のプロフェッショナルにお話を伺って、たくさんのことを学んできましたね!

千葉:そして、今回のゲストは、当社も所属している業界団体「リノベーション協議会」の本部事務局長、樽宏彰さんです!

集合写真

左:田形研究員、中央:樽宏彰さん、右:千葉研究員

田形:いつもお世話になっております〜!どうぞよろしくお願いします!

樽:お世話になっております。取材だなんて、ドキドキしますね。

千葉:リノベーション協議会は、リノベーション業界の企業約900社が所属していて、数々の施策を通して中古流通とリノベーションの活性化をはかっている団体です、よね!?

樽:はい、その通りです!

田形:今日は、中古リノベーションの工事で見えない部分を含んだ、リノベーション工事の「施工品質」にまつわるお話を伺えればと思います。

樽:わかりました!どうぞよろしくお願いします。

1)「リノベーション協議会」ってどんな団体?

田形:まず、リノベーション協議会の設立背景について教えていただけますか?

樽:協議会が立ち上がったのは12年前ですね。当時リクルート住宅総研にいらした島原万丈さんが発起人となり、中古リノベーションの企業に声をかけてくださったんです。合計10社ほどが集まって「既存住宅流通とリノベーションの活性化」をテーマに会議を進めていくうちに、「業界団体を作った方がいいんじゃないか」という話になり、協議会を立ち上げることになったんです。

樽さん2

樽:島原さんは「既存住宅の流通を日本で推進していかないとダメだ」という考えの中で、「リノベーションが最も有効な手法だ」と。最初はリノベーションの定義から考え始めました。響きがなんとなくかっこよくてみんなが使っていた「リノベーション」の曖昧なイメージをきちんと定義していったんです。

田形:島原さんはこの「リノベを科学する」第1回にもご協力いただきましたね!ちなみに、どんな風に定義付けをされたのか、気になります!

樽:ただ単に「かっこいいからリノベーション」というのはよくないな、ということで、「古いものを大切にしていこう」「ストック型社会を実現しよう」みたいな形になっていきましたね。最終的に、リノベーションは「住宅の価値・機能を再生する包括的な改修」であり、単に原状回復のための表面的な修繕を行う「リフォーム」とは一線を画した手法であると定義づけました。

田形1

田形:「リフォーム」との違いが曖昧な人は多いと思うので、定義があるとわかりやすいですね!

樽:リノベーションを浸透させていくためにも、きちんとした定義付けが必要だと思ったんです。これが当たり前になって中古住宅がどんどん流通されていく世の中になれば、住宅が資産価値を持つようになり、みんなの蓄えにもなりますしね。

田形:ひいては国の蓄えにもなっていくわけですもんね。

樽:そうなんです。このグラフを見ると、ヨーロッパでは住宅が資産になっているのがわかります。日本の現状は、ただ単に買ってローンを払い終えた頃には資産価値がなくなっていて、それを繰り返しているんです。

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リノベーション協議会 提供資料より

田形:わかりやすいグラフですね!世の中にとっても、個人にとってもメリットのある選択ですが、中古が不安なのもわかります…。その不安を解消するために協議会が作ったのが、「適合R住宅」の制度ですよね。

樽:そうですね。工事の品質面など見えていない部分が多かったので、基準を作っていくことにしました。リノベーション業界には、僕が所属するインテリックスのように中古物件を購入してリノベーションを行って販売する買取再販事業をメインに行う不動産系の会社と、リノベるさんみたいに設計・施工をメインに行う建築系の会社と、大きく分けて2タイプの会社があって、同じ業界でもちょっと違うんですよね。だけどエンドユーザーに提供するものは同じなので、横串を刺して共通の基準を決めていったんです。

千葉:なるほど!画期的ですね。

2)リノベーション推進のためにどんな活動をしているの?

田形:現在のリノベーション協議会の主な活動について、お聞かせいただきますか?

樽:「リノベーションの品質基準を定めて優良なリノベーション住宅の理解・普及推進を行っていく」という方針のもと、「リノベーションの認知向上」「事業者の品質向上」「事業環境の整備」の3つを軸にアクションを行っています。

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リノベーション協議会 提供資料より

田形:「リノベーションの認知向上」は、リノベーションのお祭りであるリノベーションEXPO開催などを通した広報活動、「事業者の品質向上」は、リノベーション・オブ・ザ・イヤーなど優秀なリノベーション事業者の表彰制度や、この後にお話しいただく「適合R住宅」などの制定だと思うのですが、「事業環境の整備」って具体的にはどういうことですか?

樽:例えば金融機関では、新築ではスパッとローンが通るのに、中古を買ってリノベーションの場合は通りにくかったり、税制優遇も新築より小さかったりしますよね。リノベーション業をやっていこうとしても、業界の環境が整っていないからやりづらい部分があるんです。

千葉:確かに事業環境って、普及するためにめちゃくちゃ大事なことですよね。

樽さん1

田形:12年経って「リノベーション」という言葉自体も、一定以上の認知がされているという調査結果も出ていましたね。とは言え、まだ「古い建物が不安」という一般的な認識は大きく前進していないのかなと思っていて。私たちがこの連載を始めたきっかけはそこなんですよね。

樽:リノベーションを検討する人は確実に増えていると感じています。ただやっぱり、全体の母数が増えているので、その分「不安」と思っている人と接することも増えてきているんだと思います。

田形:確かにそうですね。

千葉:どれが正しい情報なのかわかりづらいというのもありますよね。なんとなくのまとめ記事や口コミサイトの情報しかないというのが現状で、中立的な立場からの情報が少ないから、知れば知るほど疑問点が増えてくると思うんですよね。そこをしっかり伝えていくのが僕らの使命なんだと思っています。

千葉1

樽:なるほど!確かにそうですね。

3)「適合R住宅」ってどんな制度?

田形:ではここから、「適合R住宅」の制度についてお聞きしたいと思います!この制度は、事業者の品質向上を目指しながら、リノベーションの普及を行うためのベースの基準みたいなものでしょうか?

安心R_適合Rパンフレット

リノベーション協議会 提供資料より

樽:まさしくそうですね。協議会が定める優良なリノベーションの統一規格です。

田形:具体的にはどのように認定を行っているんですか?

樽:これは協議会が何かチェックして行う認定という制度ではなくて、協議会が設けた基準に適合しているかどうかを事業者が消費者に対して報告をするという仕組みなんです。

千葉:僕もデザイナーだった頃、適合報告書をお客様にお渡しした記憶があります。

田形:これにより、お客様は見えない部分に対しても安心感を持てるということですね。

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樽:はい。大きな流れとしては「検査→工事→報告→保証+履歴」という5つのフローがあります。協議会の定めた検査基準を満たす工事を行い、リノベーション内容を消費者に報告し、重要な部分については保証をつけ、それらの情報を住宅履歴として残す。検査だけをやるのではなく、重要なのはこのフローですね。これを住宅のタイプ別に「R1(マンションの専有部分)」「R3(共用部分を含む一棟全体)」「R5(戸建)」と区分して品質基準を設け、運用しています。

田形:建物のリノベーション工事前の現場検査から工事後の報告、保証と履歴を残すところまで…最後までしっかりという感じですね。

樽:報告が必要なのは、重要なインフラ部分ですね。基準を作る時に項目選びに迷ったのですが、消費者にとって「目に見えない」とか「わからない」とか「重要なもの」という観点で13項目に絞りました。

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リノベーション協議会 提供資料より

樽:報告書には、これらがきちんと検査基準に適合しているのかを明記し、新規に交換した設備と既存を残しているものとを明確にした上で、2年以上の保証をつけるルールにしました。さらに、検査や保証に関する問い合わせ先についても明記が必要です。こうして書面を渡すことで事業者も「ちゃんとしなきゃ」って思うんですよね。

田形:既存のものを残すことについても明記するというのが驚きでした。

樽:表面的にきれいになっているから、全部新しいものに交換されていると勘違いする人も少なくないんです。

千葉:既存利用の箇所に関しても、検査し保証しているところは特徴ですね。

田形:ちなみに、履歴というのは具体的に何を残すのでしょう?

樽:平面図と仕様書は必須で、配管図、配電図、設備位置図は必要に応じて登録することになっています。お施主さまと協議会の会員企業はデータを見ることができます。暮らしていく中で「そろそろまたリフォームしようかな」という時に、お施主様ご自身が会員ページから図面などをダウンロードして、事業者に図面を見せて、スムーズに相談ができるんです。

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田形:個人のメリットという視点で考えると、一定の品質を確保できること・保証があること・図面を含め修繕履歴が残ることの3点が大きなメリットですよね。逆に事業者側から見れば、基準以上の品質を提供できているという保証になり、安心感を提供できる点がメリットなんですかね?

樽:そうだと思います。

田形:なるほど。ちなみに、国がやっている「安心R住宅」という制度との違いは何なんでしょう?

樽:「適合R」が重要インフラをきちんと検査・保証してリノベーション内容を履歴に残すことを求めるのに対し「安心R」は、耐震基準や瑕疵保険の検査基準に適合している・綺麗になっている・住宅履歴の有無を開示する、ということを求めています。協議会としては両方セットの登録を推奨していますが、現実としては安心Rの登録をせずに適合Rと瑕疵保険という組み合わせが多いですね。

田形:なるほど〜、二つは違う角度からの基準なんですね。個人的には、中古住宅への不安って見えない部分に対するものが大きいので、適合Rの基準は大きな安心材料になるなって思いました!

樽:ありがとうございます。嬉しいです!

4)「適合R住宅」の検査ってどんな感じ?

田形:適合R住宅の検査って具体的にどんなことをしているのですか?

樽:例えば、給水管の水圧試験がわかりやすいかもしれません。給水管に現場の1.5倍の圧をかけた状態で1時間放置して、水圧の低下がないかをチェックするんです。

田形:給水管が割れていたりしないかっていうことですか?

樽:そうです。割れていたり、穴があいていたりしないかの確認です。

水圧検査の様子

給水管検査の様子_リノベーション協議会 提供資料より

千葉:給水管に水が充填されて、なおかつ水道の蛇口から常に圧がかかっているから蛇口を捻ると水が出てくる。そこにさらに圧を足して、パンパンになった水道管から水が漏れていたら水圧が下がるんです。

田形:なるほど!今ようやく理解できました(笑)

樽:管の材質によって水圧の変化の仕方が異なるので、素材ごとに基準値が定められています。実際、これによって水漏れが見つかることもあると聞きます。

千葉:それって、えらいこっちゃなんですけどね(笑)

田形2

田形:ですよね…。でも通常は1.5倍の水圧なんてかからないでしょうから、ここまでやってくれたらすごい安心できますね!他にはどんな検査があるんでしょう?

樽:電気配線の検査もありますよ。

通線検査の様子

電気配線検査の様子_リノベーション協議会 提供資料より

田形:漏電してたら火事になっちゃいますもんね。あれ、電気のスイッチ確認って照明器具がまだついていないのにどうやってやるんですか?

千葉:持っていくんですよ!1カ所ずつ照明器具を仮で取り付けて確認するんです。

田形:おお!…なかなか大変な作業ですね。中古って状況がそれぞれ違って、前に住んでいた方がどんな風に使っていたのかも、どれぐらいくたびれているかもわからないから、こうした検査基準でみなさんに安心を提供しているということなんですね!

5)リノベーションが普及したら、どんな未来が待っている?

田形:樽さんは協議会本部の事務局長として、適合R住宅が浸透していった先にどんな未来を期待していますか?

樽:正しい、きちんとしたリノベーションが広まっていけば、中古住宅を安心してリノベーションできることへ繋がると思うので、今よりも中古住宅が流通しやすい社会になるんじゃないかと思っています。

田形:売却の時に、適合報告書がある物件に関しては価値が上がる、ということにつながっていけばいいですよね。

樽さん3

樽:まさにそういうことをやっていかなければと思いますし、この制度が浸透したら、さらに基準を上げていきたいですね。今の適合R住宅って基礎的なものでしかないので、レベルが上がってもっと上位基準が出てきたら、よりきちんとしたリノベーションが普及しているということになるので。

千葉:なるほど、質をよくしていくんですね。そうすると消費者はより一層安心感を得られますしね。この12年間で適合Rの基準のマイナーチェンジはしているんですか?

樽:しています。例えば、会員からの「給湯管の漏水事故がある」という声を受け、水圧試験の対象に給湯管もプラスしました。

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田形:広い目線で見ると、リノベーションって地球や環境を守る一つの方法でもあると思っています。

樽:そうですね。もっとエコ的な要素も取り入れないといけないのかもしれないです。断熱性能などの省エネ基準を設定するとか。

田形&千葉:それ、いいですね!!

田形:前回、「エネルギーまちづくり社」代表の竹内さんに中古住宅の断熱についてお話を伺ったんです。「中古であっても後付けで断熱機能を高められる」というお話でした。今後の展望としてそこに注力できたら、よりかしこい選択肢になりますね。

樽:「新築だからできる」じゃなく、どんなステータスの住居でも、「住まいなんだからやらなきゃ」という風に考えないといけないですよね。

田形:何より住んでいる人の快適性が上がって、健康面もよくなるし消費電力やCO2排出量も減っていいことづくめなのに、目が向けられていないんですもんね。

千葉:今って暮らしに注目が集まっているからプッシュしやすいかもしれません。家にいる時間が長くなって、「今までより電気代が高い!!」って実感している方、絶対に多いですよね。

千葉3

樽:今年あたりがいいタイミングなのかもしれないですね。

田形:大きな流れがきていますもんね。竹内さんから樽さんへとつながった感じがして嬉しいです。

千葉:リノベーション協議会の今後のエコな展開が楽しみです!

田形:本当ですね!樽さん、今日はお忙しい中為になるお話をありがとうございました!

樽:こちらこそ、ありがとうございました!!

※)今回のゲストプロフィール

樽 宏彰(たる・ひろあき)さん

ポートレート

一般社団法人リノベーション協議会 本部事務局 事務局長(所属:株式会社インテリックス)不動産デベロッパー、コンサルティング会社を経て、株式会社インテリックスに入社。その後、上場・IRおよび企画業務、仲介業に携わり、現職。


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