“人も猫も”快適に暮らす工夫を随所に。中古リノベで叶った愛あるくらし【好きでつくる暮らし byリノベる。#1_猫】
あなたには、暮らしをいとなむ上で欠かせない存在がありますか?
住む人にとってかけがえのない存在をも包み込む住まいこそが、すこやかな暮らしにつながるはず。そして、一人ひとりの“ありたい暮らし”を叶えるリノベーションには、そんな住まいづくりを実現する力があると、私たちは考えます。
今回からの連載「好きでつくる暮らし byリノベる。」では、実際にリノベるのお客さまの「好き」を反映した住まいづくりをご紹介。
リノベーションだからできる、愛してやまないものと心地よく暮らせる住まいは、これから住まいづくりを考える方にとって、大いに参考になるのではないでしょうか。
第一回目のテーマは、「猫も人も幸せなくらし」。東京にお住まいの巻田さんの住まいづくりを、担当設計士のリノベるOB・大山さんと一緒に振り返ってもらいました。
(文・村崎恭子)
<基本データ>巻田邸
・築年数 築57年
・広さ 60.59m.
・現在の間取り 2LDK→1LDK+WIC+収納室
・家族構成 2⼈+2匹
<物件紹介>“人も猫も”快適に暮らせる住まい
巻田さんが今の住まいで暮らし始めたのは4年前。パートナーと愛猫2匹との生活を描き、当時築53年の物件を購入し、「人と猫のための」リノベーションを実現しました。
早速お家の中を見てみると、全体的なテイストは巻田さんのセンスがしっかり反映され、駆体あらわしの荒い雰囲気の壁周りに、床や小上がりなどに使われた天然木が温かさを演出しているのが印象的です。
では、リビングの天井を囲うように配置された木製のカーテンレールに注目してみてください。気づきましたか?そう、この上は巻田さんの飼い猫たちが自由に歩けるキャットウォークになっているのです。よく見たら猫が休憩できる顔出し穴つきの物陰も。
ほかにも、脱衣所の扉に猫ドアをつけたり、玄関、ウォークインクローゼット、納戸など、モノの多い危ない場所に入らないためと、脱走防止のため、LDKを隔てる扉に鍵を付けました。猫の入れないゾーンに洗濯機を置いて安全にも考慮しつつ、収納への動線も確保しました。巻田さんはご自身の好きな素材やテイスト、家事動線にもしっかりこだわりながら、愛猫たちと快適に暮らすための工夫を盛り込みました。
<きっかけ>ペット可の物件でこだわりの住まいをつくりたかった
以前は賃貸物件でパートナーと猫1匹と3人暮らしをされていた巻田さん。毎月の家賃の負担について疑問を抱いたことから、購入を検討し始めたといいます。
巻田さん:それなりに選んで住んでいた家だったので、大きな不満はなかったんです。だけど、同じくらいの金額を毎月払うなら、購入した方がいいなと思うようになり、それに併せて、ペット可の物件で猫にとっても住みやすいところで暮らしたいなと考えていました。
巻田さんの中では、購入を考えた時点で選択肢はリノベーション一択。新築マンションは全く候補に考えていなかったそうです。
巻田さん:新築は鍵を開けた瞬間に資産価値が下がるという話を聞いたことがあったのと、やっぱり単純にワクワクするかどうかを考えました。高い金額を出すなら、みんなと同じような住まいではつまらない、自分だけのこだわりの住まいをつくりたいと考え、中古マンションをリノベーションなら実現するかなと思いました。リノベるや住まい系のメディアなどでいろんな事例を見ながら、「こういうのがいいな」と参考にしたいものをストックしていきました。
この段階では、「猫のためにキャットウォークをつくれたらいいな」とぼんやり考えていた程度だったという巻田さん。当時の家の近くにあったリノベるのショールームを見学し、リノベーションの基礎知識などを教えてもらう中で、ワンストップでリノベーションがかなうことを魅力に感じ、リノベるで住まいづくりをすることに決めました。
<物件探し>築古だからこそのゆったり感が魅力
物件探しの条件は大きく二つ。「ペット可」であることと、「住宅ローン控除が受けられる広さ」であることでした。立地や周辺環境、日当たりなどの優先順位はそこまで高くなかったそうです。
「ペット可」の物件は決して多くないため、内覧したのは4軒ほど。そのうち3軒は山手線の内側で床面積が狭かったため選択肢から外しました。残る1軒である現在の住まいは、団地のような古い構造の物件で、約61㎡とゆったり感があり、偶然にも巻田さんのご実家に近くのよく知るエリア。日当たりもよく、いい印象を受けたといいます。
巻田さん:古い分、ゆったりとしたつくりが魅力的でした。当時築53年と古いけれど、そのくらい建っているってことは、大事にされているってことなので、逆にすごく魅力だと思ったんです。耐震性は不安だったので、有料で耐震性能を調べてもらったところ、新耐震と同程度の基準が満たされているという証明を取れたので、それが大きな決め手になりました。
<リノベーション>「人と猫」それぞれの快適性を追求
物件が決まると、カウンセリング担当や物件担当からバトンタッチし、いよいよ設計士の大山さんとの打ち合わせが始まりました。打ち合わせではお互いに調べてきたことなどを共有しながら、プランニングが進んでいったといいます。
大山さん:マンションの構造には2種類あるんです。柱や梁が建物を支えている『ラーメン構造』と、壁と天井と床で建物を支えている『壁式構造』です。このマンションは「壁式構造」で、壁を取り払って間取り変更ができない可能性があり、リノベーションの制限になる場合があります。ただ、巻田さんはそれをネガティブには捉えておらず、「役割を持たせればこの壁は生きてくるよね」とお話しされていました。解体後、実際に壁の状態を見たら「これは面白いな」となり、解体したままの状態で部屋のアクセントにしています。
巻田さんの住まいづくりのポイントは、「人と猫」どちらもが心地よい住まいになるということ。
「人間が快適に暮らせる空間」という軸と、「猫にとって過ごしやすい空間」という軸がバランスよく、家の中の随所に落とし込まれています。
巻田さん:猫のことは家族だと思っているので、人間と猫がどう共存するかということを考えました。例えばキャットウォークに複数の役割を持たせたり、人間も猫も快適な間取りがどういうものか考えたりしました。
特にこだわったのは、居室と収納を分けた間取りです。
大山さんは最初、玄関を入ってすぐ左の部屋を寝室として提案しましたが、巻田さんの暮らしのイメージとは少しずれがあったそう。その部屋は大きなウォークインクローゼットにし、中には洗濯機置き場を配置して、洗濯・乾燥→収納の動線も確保。寝床やワークスペースやLDKのある「居室」をバルコニー側に作り、と、脱衣所やトイレ、納戸やウォークインクローゼット、玄関と土間などを「収納空間」としてまとめ、その間には猫が入れないよう鍵付きの引戸を設置し、2つの空間をしっかり隔てる仕組みづくりをしました。
一方、新居では保護猫をもう1匹を迎えることが決まっており、巻田さんは猫たちが快適に過ごすための工夫も最初からリクエストしていました。最初は「ベッドの上あたりに少しだけ」という要望だったキャットウォークに、冒頭で紹介したようにカーテンレールの機能も加えたのは、大山さんのアイデアです。
大山さん: せっかくつくるなら、空間全体と絡めていく方が面白そうだということで、キャットウォークの下にカーテンレールをつけました。窓面だけでなく、ベッドエリア(小上がり)とリビングを仕切ることもでき、一石二鳥の役割を持たせた形です。小上がりと同じ素材を使い、見た目もスッキリさせました。
巻田さん:窓より高い位置に設置したので、窓が広く見えて開放的な印象になるし、猫たちの逃げ場にもなっています。
キャットウォークへのアプローチになる階段や棚板は猫の健康を意識し、ステップやジャンプができるような設計にしました。「この段差は飛べるかな」「背中が当たらないかな」など、普段より大きめの縮尺で図面を描きながら打ち合わせをしたといいます。巻田さんは“猫リノベーション”の本を読み込んで2匹がすれ違えるサイズ感を考えたり、大山さんはこれまでの経験に加えて他の事例も参考にしながら計画をしたり。人も猫も快適に過ごせるための工夫は、まさに二人三脚で取り組み、生まれました。猫が使わない場合にも、飾り棚としても使えるデザインにしています。
もう一つのアイデアは、アーチ型の猫ドア。猫のトイレは換気扇があるところに置くと匂い対策にもなる。今回の住まいでは、脱衣所に換気扇があったので、人が使っている時でも猫が自由に通れるようにドアを付けました。
<入居後の変化>人と猫が近くなった
人も猫も、家族みんなが暮らしやすい工夫が散りばめられている住まいで暮らし始めてから4年ほど経った今、以前の住まいと比べて巻田さんの暮らしはどのように変化したのでしょうか。
巻田さん:やっぱり、人と猫が近くなった感覚がありますね。寝ているとキャットウォークにいる猫が見えたりするんです。リビングのソファで毎晩みんなで映画をを観るんですけど、猫がピタッとくっついて一緒にいてくれる時間は「ああ、ここに引っ越してよかったな」と思う瞬間ですね。
実は、リビングのキャットウォークについては、猫たちはあまり頻繁には使っておらず、知らない人が住まいに来たときの逃げ場になっているそう。巻田さんは「人間のエゴだったかな」と笑いながらも、「だからこそ、カーテンレールの機能を持たせておいて本当によかった」と大山さんの提案のありがたさをかみしめています。
巻田さん:僕、大山さんと話しながらつくっていくのがすごく楽しかったんです。回数を覚えていないぐらいたくさんやりとりをして、深くお話しさせていただいて。アイデアを持ち寄って、良いものをつくっていく感じが、すごく強い思い出になっていますね。
やっぱり、大山さんと一緒に家事動線とかを考えてつくっていったから、生活のクオリティが前の家よりめちゃくちゃ上がったと思っています。僕たちも快適で、猫ものびのび過ごせて、「人も猫も」っていう視点でこだわってつくれたのは大きかったですよね。
大山さん:いやぁ、うれしいですね。私も、つくり上げていく過程が面白かったです。中古マンション+リノベーションだと、解体してみて初めてわかることがやはりあるので、やっていく中での課題は多かったと思うんですよ。でもそれを一個一個クリアしていくこと含め、巻田さんと一緒につくっていった感覚がすごく強いです。
巻田さんご自身も興味や知識が深く、だからこそ自分も新しい知識を持っていっていろんなトライをさせてもらいました。駆体壁をそのまま活かすことをポジティブに捉えてくださったので、「これがいいってことは突き抜けて面白いことをしていいんだな」と思ったのが印象深かったですね。
<これから>2度目のリノベ、検討中!
大山さん:今回は「人と猫」がテーマで、その結果この住まいができましたが、もしもう一回やらせていただいたとしたら、また全然違うものが出来上がると思いますし、その過程が面白いんだろうなっていうのはイメージができますね。
そんな大山さんのお話が、もしかしたら近い将来叶うかもしれません。実は今、巻田さんは2度目のリノベーションを検討中だそうです。
巻田さん:彼女との結婚を考えているのが理由の一つです。良かれと思ってワンルームにしたものの、僕と彼女の生活リズムが結構違って、深夜に帰った時に起こしてしまうので、もう一部屋欲しいなと思っているのと、あとは純粋に当時の住まいづくりが本当に楽しかったので、「またリノベーションをしたいな」って思う気持ちが大きいです。
次のリノベーションでは、「もう少し猫寄りで考えてみようかな」と巻田さん。新しいライフステージの暮らしを意識して、今とはだいぶ違う雰囲気を描いているようです。
巻田さん:リノベるさんの表参道ショールームを見に行ったのですが、回遊動線がすごく魅力的だったのと、意外と「白って悪くないな」と思ったんですよ。今の住まいの壁は、自分でも「攻めすぎたかな」と感じていて。ファミリーになったら、もうこんなには攻められないかな(笑)
今の住まいでは猫が作った床の汚れや爪とぎ痕が残ったりしているため、次回は床をタイルにするなど、今よりも“猫寄り”な素材選びも検討しているそう。大山さんからも、「コーナーをガードするような設計にしたらいいかも」とアドバイスがありました。
駆体の荒々しさをそのまま活かした荒い雰囲気の住まいから、ライフステージの変化をきっかけに、家族みんなが落ち着ける雰囲気の住まいへ。巻田さんの2度目のリノベーションは、再び二人三脚しながら、人と猫がますます快適に暮らせる住まいを追求することになりそうです。
<動画>YouTubeでルームツアー動画を公開中
いかがでしたか?今回紹介した住まいのルームツアーを公開中です。ぜひご覧ください。
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※2024年2月に「偏愛くらし byリノベる。」は「好きでつくる暮らし byリノベる。」へ名称変更しました。